猛暑の続く夏には、肩やおなかにシンとした不快な冷たさを感じる、いわゆる「夏の冷え」に苦しんでいる方も多いのではないでしょうか。
かつて「冷え性」は、女性特有の悩み・症状であると捉えられがちでした。
女性は男性に比べ、筋肉が少なく皮下脂肪が多いために、外からの熱を通しにくいことや、あるいはホルモンバランスが崩れやすいことなどがその主な理由とされてきました。
それはそれで事実なのですが、しかし最近は10~30代から中高年男性にいたるまで、年齢や性別そして季節に関わりなく、冷え性で悩まされる人が増えています。
とりわけ夏場においては、体温を軽く超える猛暑の戸外と、発汗による体温調節機能が長時間封じられる冷房の効いた通勤電車やオフィスを出たり入ったりして日々を過ごしているため、体温調節機能をつかさどる自律神経がバランスを欠いてくるほうがむしろ当然かもしれません(冷え性のメカニズム(healthクリック)ご参照)。
またオフィスなどでは、個人の体調に関係なく決められた制服・休憩時間・外回りの営業時間など画一的な条件の下で一日の大半を過ごさざるを得ないため、冷えの予兆を感じたからといって、すぐに適切な対策や予防措置をとれない状況に置かれているのが普通です。
ストレスや運動不足・暑い夜の睡眠不足などが原因となり、自律神経の失調に拍車がかかってダメージが累積し、冷え性体質がさらに強まる場合もあります。
加えて高温多湿な夏は、胃腸機能も低下しがちであり、食事も栄養の偏った簡単なもので済ませたり、また冷たいアイスやドリンク類のとり過ぎへと、つい流れがちになります。
そのため、体内の熱生産の源となる摂取エネルギーの絶対量が減少し、さらに冷たい食べ物で体を冷やすことで、冷え性が加速する悪循環につながりやすくなります。
また鉄分やミネラルなどの摂取不足によって、冷えだけでなく軽い「貧血」の症状を伴っている場合も、珍しくありません。
一般に効果があがりやすいとされる「夏場のダイエット」にはげむ若い女性が、食物からの摂取エネルギー量を減らす生活によって体温があがりにくい状況を続けた結果、冷え性を体質として定着させてしまう場合もあります。
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冷え性はつまるところ、「血流の悪さ」から生じていますので、身体の内面と外的環境の両方で、血液やリンパの流れを悪くするマイナス要因を幾重にも積み重ねていった結果が、「夏の冷え」につながるわけです。
特に夏の冷えは、冬に比べて肩やおなか等の上半身に冷たさ・不快感を長時間感じる方が多いと言われます。
冷え症の定義やその発生原因は、実はまだきちんと特定されていません。
しかし体温を調節する自律神経の乱れ、あるいはホルモンバランスの崩れなどによって、血液やリンパ液の流れが悪くなって生じる症状であることは、確かです。
体の血流が悪くなることで体温が上がりにくい体質となり、結果として代謝が落ちて免疫機能も低下して、他の病気を招き入れやすくなることも冷え性の特徴です。
病気にまで至らずとも、冷え性のため肩こりや肌荒れ、めまいやむくみなどの不快な症状が、併発することも多くなります。
日々の生活を快適に送るためにも、「夏の冷え」対策は「日々の生活習慣の改善」から始まると自覚して、おっくうがらずこまめな対策を積み重ねる必要があります。
夏の冷え性対策は、「冷えを悪化させる外的要因をブロックする、いわば直接的・対症療法的なアプローチ」と、上に述べたような内的な要因の改善、つまり「冷えになりにくい体質へと、地道に改善をはかっていくアプローチ」の大きく二つに分けられます。
二つ同時に実行して「相乗効果」を狙っていくのが、冷え性を解消するための基本となります。
夏の冷え性対策の筆頭は「冷房対策」、と言ってよいでしょう。
一般に職場の冷房などは、28℃くらいが設定温度として最適とされます。
省エネに対する社会的意識の高まり、また東北大震災以降の全国的な節電志向を背景として、クールビズ・扇風機の使用の推進も進み、冷房の温度を低めに設定するオフィスは少なくなっています。
しかし自分の体調にそぐわないからという理由で、オフィスを勝手に抜け出すわけにもいきません。
職場で自分の机周りが寒すぎると感じる場合、やはり自己防御を固めるしかありませんね。
夏の冷えは上半身が多いことからも、まず着脱が簡単で持ち運びやすいショールや薄いカーディガン等を、職場に常備するようにします。
それらを脱いだり着たりして、自分なりに寒暖をこまめに調整することを習慣化しましょう。
職場だけでなく、通勤電車やランチタイムのレストランなどで、長時間からだを冷やしてしまいそうな場合もあります。
外出時の携帯用と職場常備用に、冷え対策用の服を分けて保管するのも一法でしょう。
念のため、夏の冷えだからといって、下半身は冷やしておいていいということにはなりません。
ひざ掛けなどもあわせて常備し、足もともそれなりの防御を怠りなく。
自宅であればエアコンは自由に温度調整できるわけですが、電気代高騰の気配がただよう折、節電のみならず冷え性対策という点でも、一日中冷房をつけっ放しのライフスタイルは、なんとかして改めたいところです。
ご存知のとおり、快・不快に大きく関わるのは、温度よりもむしろ湿度です。
エアコンの除湿機能や除湿機も電気代がかかりますし、放熱作用でかえって部屋の中が暑くなる場合もあるので、難しいところではあるのですが。
部屋の湿度に注意しつつも、風通しをよくするよう気を配り、また冷房のなかで汗をかいた肌をさらしすぎないよう、吸湿性が高く、汗の発散に適した素材の服を着るようにします。
エアコンをできるだけ控え、自宅で快適に過ごす工夫をこらすことは、冷え性対策のみなず高騰する電気代の節約にもなり、一石二鳥です。
次は食事・飲み物です。
(なお冷え症改善によい食事については、関連サイト「冷え性 食事対策でジワッと症状・体質を改善」 も、あわせてご覧ください。)
夏の冷え性対策の基本は、何と言っても「体を冷やす食べ物」を避けることです。
野菜でいえばいわゆる「夏野菜」に属するもの、スイカやキュウリ、ナスやトマトなどを避けるようにします。
ニンジンやゴボウ・大根などの「根野菜」を、温野菜や野菜スープのかたちで積極的にとるようにしましょう。
また砂糖を摂取しすぎると、血糖値が増えて血液の流れが悪化し体を冷やしますので、アイスクリームなどは摂り過ぎることの無いよう最小限にしたいものです。
飲み物では、アイスコーヒーも体を冷やす働きがあります。
番茶・ミルクティー等がベターですね。
栄養素では特に、ビタミンE、タンパク質・鉄分が欠乏しないように注意しましょう。
食べ物から摂取するのがベストですが、夏は食欲が落ちるため、足りない栄養素はサプリメントから補うことを考えるのがよいでしょう。
ちなみに冷え性によいとされる成分・食物としてはビタミンE(ナッツ類やごま等)・イチョウ葉エキス・カシスエキス・黒にんにく・黒ごま・しょうが・唐辛子などがありますが、機会を見つけて「多くの種類を少量ずつ」意識して摂りたいものです。
お風呂は一日の疲れとむくみをとり、血流をよくするので、なるべく就寝前に入りたいものです。
毎日のお風呂は大変…という方は、バスタブに熱めのお湯をはって、数十分程度足をつける「足湯」だけでも、かなりの効果が見込めます。
特に足湯の場合、40~42度程度のお湯に大さじ1杯程度の塩、あるいは2~3本のトウガラシを入れてから行なうと、発汗と血流改善がさらに促されます。
入浴・足湯後の発汗を放置して体を冷やしては逆効果ですので、汗や水気を拭いた後は早々に、薄手の肌着・パジャマを着て寝るようにしたいものですね。
もちろん、冷房をかけたままの就寝は厳禁です。
ちなみにシャワーは汗をとるだけで身体を温める効果はありませんので、覚えておきましょう。
なお、足を冷やさないように…と靴下をはいて寝る方もいるようですが、専用品ならばともかくごく普通の靴下は一般にゴムの締め付けがきついですし、また足指をすっぽり覆ってしまうと熱が逃げるところがないため、冷え性対策としてはむしろマイナスになることは、覚えておきましょう。
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さて、もうひとつのアプローチである体質の改善(生活習慣の改善)についてですが、これは職場・生活環境に左右されることもあり、「自分の現在の生活環境に照らし、できる範囲で実行する」やり方にならざるを得ません。
基本線は、いわゆる「生活習慣病」向けの対策と同じです。
すなわち、睡眠時間をきちんととり、不規則な生活スケジュールをできるだけ避ける。
また生活上のストレス・イライラ感を、内にため込まない。
断続的にイライラしたり緊張したりしていては、血管が収縮して血流が悪化し肌のむくみにもつながりますし、ひいては「冷え」の遠因となるからです。
そして、暑くて体を動かすのもついおっくうになりがちな季節ですが、機会を見つけてちょっとした運動を日々の生活に取り入れることは、生活習慣病のみならず、冷え性対策としても有効です。
運動による筋細胞の発達は、体温の上昇を助けるからです。
通勤時の駅までバスを使わずに歩く等、「できることから、できる範囲で」が基本となります。
外で運動をするのが難しい場合は、室内で高さ20~30cm程度の踏み台をその場で昇り降りするいわゆる「踏み台昇降」や、手足を大きく振って行なう「その場足踏み」などを毎日5~10分程度続けるだけでも、全身の血行が良くなって冷えの改善につながります。
「冷え性の改善=血流をよくする対策をとること」ですので、汗をかく程度の運動をすることは、血の巡りをよくするためにも欠かせないことなのです。
ただしかいた後の汗を放置して、身体を冷やさないことも、もちろん同じくらい大事です。
また言うまでもなく、炎天下を走りすぎて熱中症になっては元も子もありません。
本日からでもすぐに生活に取り入れられそうな「夏の冷え性対策のポイント」を挙げてきましたが、いかがでしょうか。
ぜひ覚えておいていただきたいのは、「その日の冷えは、その日のうちに取る」ことが基本である、ということです。
そのように冷え性の改善・解消を意識して、生活習慣をよくする方向に向けた日々を積み重ねていると、結果的に「冷えに強い体質」ができてくることになります。
「日々の積み重ね」が大切なのは冷え性の改善・解消においても一緒、ということですね。
なお、関連サイト「 低血圧の症状~改善・解消のための対処法」も、よろしければあわせてご覧ください。
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